岡山老舗 自慢の調味料
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味噌と醤油、そして酢。それらはかつて中国から伝来し日本に根付いたものと言われており、国内各地の気候や風土にあわせて「その土地らしさ」を魅力とする個性が育まれた現在では、バラエティ豊かな品々が存在しています。
古くから米どころとして栄えてきた岡山では、瀬戸内海沿岸の穏やかな気候と原材料である農作物に恵まれ、他の地域と同様に、先人の生活の知恵から科学へと醸造技術を発展させてきました。なかでも製造工程で、「水が腐らない、酒が芳醇になる」と伝承されている備前焼を利用している蔵があるのは、ご当地ならではの特長です。
今回は昔ながらの製法を忠実に守りながらも、時代に応じた新しさを取り入れている老舗各社をご紹介いたします。それぞれのお店を代表する調味料で、おすすめ料理を作ってみてはいかがでしょうか。ほんのり甘めの醤油にまろやかな味噌、独自の技術を持つ酢など、いつもの味をちょっぴりグレードアップさせるスパイスとして、ぜひ活用してみてください。
01.味噌
初代が生んだ名物「臥龍(がりょう)田舎みそ」、2代目が手がけた大ヒット作「白みそ」を受け継ぎ、現在は3代目が守る馬場商店。オリジナル商品のほか、大手メーカーの原料として白みそ加工商品の製造や、地元である備前地域と関西圏の学校給食への提供など、多くの人々が毎日口にするものを作っているからこそ、無添加や安全性にこだわっています。「大正時代から蔵に付いている麹菌とか酵母が、旨いものを作ってくれる。微生物が気持ちよく働いてくれる環境を整えてるだけ」という馬場社長の、発酵への愛情は人一倍。4年もの歳月をかけて商品化した「紅糀みそ」をはじめとした製品開発や海外進出など、日々、味噌の可能性を広げ続けています。
「ここがなければ、うちの商品は作れない」と100年以上大切に使ってきた麹室で、味噌を醸しています。遠赤外線を発するといわれる棒状の備前焼を、熟成に使うのも特長。塩角がとれ、まろやかで風味よく仕上げてくれるそう。
年に2回の検査が必要な世界的なオーガニック認証「ECOCERT(エコサート)」を10年以上更新しており、イギリスやフランス、ドイツに製品を輸出しています。海外でも発酵食品の持つ免疫力が注目されており、ディップして食べられることが多いとのこと。
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紅糀みそ
漢方薬として珍重される紅糀。じっくりと寝かせた香りと旨みのなかに、キレの良い苦みが程よく残るスッキリとした味は、毎日でも食べ飽きません。
アジのなめろう
ねぎ味噌など普通の味噌と同じように使えますが、オススメはアジのなめろう。細切れにしたアジに紅糀みそ、おろし生姜、刻んだ青ネギを加えて包丁で叩きながらよく混ぜ、なじんだら酒を加えて完成です。
自然素材がもつ本来の滋味を味わい、自分で作る楽しみも。
有限会社まるみ麹本店 創業|昭和25(1950)年
農家から米を預かり、麹に加工する麹屋として創業。しかし年々、農薬の普及や工業化による環境の変化により、お米や麹の品質が下がっていると感じた初代は試行錯誤を重ね、自然本来の環境で、良質な素材の持つ力を引き出した味噌づくりこそが重要だという考えに至ったそうです。大豆や米は、すべてが国内産。さらに床下と壁、天井を備長炭で覆い、マイナスイオンで整えられた炭蔵で、麹菌や酵母菌の自然な発酵と熟成を促しています。また「奇跡のりんご」で知られる木村式自然栽培で育てた大豆と米で味噌の仕込みを始めたことをきっかけに、吉野杉の木桶に順次切り替えており、自然の力を活かした味噌づくりを追求し続けています。
製麹(せいきく)室でも備長炭を敷きつめ、マイナスイオンの多い環境を実現しています。吉野杉の木桶で仕込んだ味噌はじっくりとやわらかく、かつ深い味わいを醸します。
この麹を入れる木製のもろぶたは、創業から70年以上現役で使われているもの。会社の歴史とともに、ゆるやかな時を刻んでいます。
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はじめての味噌づくりセット(樽つき)
味噌づくりに必要な、岡山県産の大豆と米、天日塩と作り方などが便利なセットに。夏は3か月、冬は8か月で約3.4kgの味噌が完成します。
みそ汁
自分で作った味噌でつくるみそ汁で、世界にひとつのお手製の味を楽しんで。
ものづくりの原点に忠実に、岡山の味噌をつくる。
名刀味噌本舗 創業|昭和29(1954)年
麹屋として創業した後、味噌づくりを始めた際に、名刀の地で知られる地元(瀬戸内市長船町)にちなんで、「名刀味噌本舗」と改名。醤油技師だった初代の「自然の形でものづくりを」という意志を引き継ぎ、昔ながらの手間暇かけた麹をはじめ、完全無添加で味噌や甘酒などを製造しています。通常は6時間おきに手入れをしながら丸2日、乾燥麹だと丸3日かかる麹づくりをほぼ年中無休、手作業で行いながら、数年前からは自ら大豆の生産(一部商品で使用)まで始めるなど、徹底したこだわりの仕事ぶりに信頼を寄せる固定客も多いそう。玄米、麦、あま酒の3タイプの乾燥麹など、原材料の質の良さを生かした逸品を楽しんでみてください。
米や麦、大豆などは、ほとんどが岡山県産を使用。味噌は地方によって大豆と米の配合割合が変わり味わいも異なるが、岡山では米や麹の配合が高いため、自然な甘みが感じられるとのこと。
現在は2代目と3代目兄弟で製造しています。東京で醸造を学び、自然食品店や飲食店での勤務経験もある3代目の兄が開発した、「生塩麹」や「糀ネクター」なども好評です。
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ひしおの糀
味噌や醤油のルーツといわれる醤(ひしお)を、家庭で気軽に作れる乾燥麹。生きた酵素、乳酸菌、酵母を食生活に取り入れられる発酵食品として大人気。醤は約2週間で完成する。
醤
できあがった醤は、そのままで炊きたてのごはんや生野菜と一緒に。漬け床や調理前の下味に、クリームチーズとあわせてディップにと、アイデア次第で大活躍です。
02.醤油
「当たりまえ」を突きつめて、唯一無二になる。
キミセ醤油株式会社 創業|慶応2(1866)年
大豆からもろみを作り、発酵と熟成を経て醤油に至るまでのすべての工程を自社で行う、国内でも数少ない蔵のひとつ。安全性の面から国産の丸大豆をはじめとしたすべての素材に自然のもののみを使用しており、なかでも五穀蔵ブランドの商品には化学調味料を一切使用していません。特長は「備前焼大甕調熟」と呼ばれる製法。紫綬褒章などの受賞歴を持つ陶芸家、森陶岳(もりとうがく)氏が制作した備前焼の大甕にもろみを入れ、音楽による振動を加えるという独特の熟成法を取り入れています。岡山県産の黒大豆を使った五黒まろやか酢や生しょうゆ麹など、オリジナリティあふれる商品開発にも定評があります。
本社2階のもろみ蔵は見学可能。醤油づくりの工程を実際に見て楽しんでほしいという思いから、世界的に活躍している照明デザイナー石井幹子(もとこ)氏に依頼したライティングで浮かび上がる備前焼の大甕14点は必見の価値あり。
※コロナ禍により見学受付を中止している場合もありますので、詳細はキミセ醤油様まで(https://www.kimise.co.jp)お問い合わせください。
<PICKUP&おすすめ料理>
まろやか醤油
色が薄めで甘口の本醸造。地元で昔から愛されているだけでなく、全国のメディアやSNSでも頻繁に取り上げられる、蔵でもいちばんの人気者。
豆腐
かけて良し、煮て良しのオールラウンダー。唐揚げの下味として使うのも◎。
地元で愛され続けている、甘口醤油。
日乃出醤油有限会社 創業|明治11(1878)年
創業140年を超えた現在、5代目が守る醤油蔵。かつての空襲や時代の変化により創業当初の姿を残す蔵が少ないなか、当時の建物と木桶を残している貴重な醤油屋です。現在は信頼のおける業者から生揚げ醤油を仕入れ、火入れの工程を自社で行うことで昔ながらの味を守り続けています。地元の味として愛されており、地域住民にとってはスーパーなどでお馴染みですが、県外在住の岡山出身者や、「これでなくては」という愛好家などからも求められています。
「醤油屋の歴史と地元の味を残したい」という思いから、蔵のうち現在使用していない部分をリニューアルして、木桶を展示しています。醤油蔵ホールと名付け、昔の面影を感じながら、イベントや講演を行う憩いの場として、活用しているそうです。
発売以来10年以上売れ続けているという「ぶっかけアイスしょうゆ」。醤油の甘みを活かしたメープルシロップのような風味のため、バニラアイスなどにかけて味わってみてください。
<PICKUP&おすすめ料理>
濃口醤油1L
塩角をとったまろやかな甘口。九州地方の甘口醤油にも近いらしく、九州在住の方からも注文があるそう。
煮魚
コクのある旨みは、煮魚に最適。煮炊き全般に使うのに向いているとのことです。
時代が変われば、醤油業も変わる。
笹埜醤油醸造元 創業|明治初期(1870)年頃
明治時代の初め頃、まだ醤油を地域や自宅で造るところもあったなかで創業し、各家に20~30リットルの醤油が入った樽を運んでいた。そんな時代の空気を、あちらこちらに残している笹埜醤油。現在は一部の商品を除いて、生揚げ醤油を仕入れて火入れのみ行っていますが、地元をはじめとした各地に存在する根強いファンの声に応えようと、一人で製造、販売を続けています。醤油協会からの依頼で小学校で醤油についての話をしたり、高校の農業科に協力したりといった醤油の普及活動という役割も仕事のひとつ、とのこと。
大正時代に開催された岡山県の醤油品評会の表彰状や看板など、明治から5つの時代を経てきた歴史の記録が、大切に飾られています。
<PICKUP&おすすめ料理>
むらさき醤油1L
甘口とはいうものの人工的な甘ったるさはなく、自然の甘さ。すっきりとした香りと味で使い勝手の良い醤油です。
煮魚
何でも合うが、煮魚、特に地元である瀬戸内海の魚とは相性が良いとのこと。
03.酢
「エーコープの酢」として全国流通している、定番のお酢。
大興産業株式会社 創業|大正8(1919)年
全国農業協同組合が品質保証している「エーコープマークの酢」の醸造を、一手に引き受けている調味料メーカー。質の良い水を必要とする醸造業が多い地域に工場を構え、安心、安全への観点から原料の米はすべて国内産。その他、可能な限り国内産や有機栽培のものなど厳選した素材を使用し、化学調味料や合成保存料を使わず自然の味を活かした製品づくりを行っています。全国的にも珍しい、発酵させてから濃縮した「濃縮五倍酢」や大吟醸を使った米酢といったオリジナリティのある食酢から、使い勝手の良い調味料までさまざまな商品を扱っているので、きっとお気に入りのものが見つかるはずです。
製造工程の信頼性を高めるため、2010年に食品安全マネジメントシステムの国際規格ISO22000の認証を取得。食品の安全性と衛生意識の向上に日々取り組んでいます。
日露戦争後、困窮する農家の人たちの役に立ちたいという思いを持ち、産業組合(現:全国農業協同組合)と協業したことから、会社の歴史は始まりました。時代は変わっても、おいしさと安心、安全へのこだわりをいちばん大切にしています。
<PICKUP&おすすめ料理>
濃縮五倍酢
通常の穀物酢を独自の製法で凍結濃縮し、5倍に濃縮しています。普通の酢として利用する場合は5倍に薄めて、水分の多い料理にはそのまま使って好みの味加減に調整すればOK。
手作りの漬物(減塩)
手作りの漬物。健康のために塩分を減らすと日持ちが悪くなりがちですが、減塩したものに濃縮五倍酢を加えると、酢の酸味で日持ちがする上に殺菌効果が高く、おいしくできるそうです。佃煮やピクルスにも。
食酢業界では他にない、氷温熟成させた醸造酢。
マンネン酢合資会社 創業|明治24(1891)年
明治時代に酒造業から独立し食酢製造を開始。ほぼすべての商品で静置発酵と呼ばれる日本古来の製法を守り、じっくりと時間と手間をかける自然発酵を行っています。また、肉や魚、野菜、酒などの旨みを引き出す氷温貯蔵、氷温熟成技術を取り入れることで、ツンとした酢特有の匂いを抑えたまろやかで味の良い商品に仕上げているのも特長。それらの氷温技術を取り入れているのは、食酢業界で唯一でもあるとのことです。主原料となる米のほか原材料は主に国内産を使用しており、化学調味料や香料といった添加物を使用せず、安全性にこだわっています。
米と米麹をあわせてアルコール発酵させたのち、氷温技術を利用。完成までに約150日かかるため大量生産はできませんが、丁寧に発酵させることで特有のまろやかさや旨みが生まれています。
昔の新聞記事の写し。岡山の郷土作家である内田百閒とつながりがあったことや、明治期の各博覧会共進会で二百数十回の金牌を受賞したことなどが記されています。
<PICKUP&おすすめ料理>
氷温純米酢
米と水のみを使用した、香りが良く雑味のない酢。ツンとした匂いがないため、料理に使うと子どもでも食べやすいと好評です。
酢の物
シンプルに酢の味が出る、寿司や酢の物がおすすめ。特に酢の物は食べやすく、自然の甘みが生かされるとのこと。